ねえ。なんで。

車の中、“誰か”に抱き締められながら、静かに涙を流した。
ただ音もなく瞳がゆれる。
窓の外は青々しい葉をしっかりつけた木が、気持ち良さそうに風の気まぐれに手をつないでわらっていた。
なんて綺麗でいられるんだろう。

光を受けて輝いているにしろ、私とはかけ離れている。
「今日、晴れてるね」
「さっきまで曇ってたよ」
「そう?」
そういって私の手を握った。
“誰か”の手はとても冷たかった。
ああ、何で私はこんなことをしているんだろう。
こんなことをしないとやってられないんだろう。
ただひたすらにかなしい。さみしい。
「ねぇ」

「ん?」

「なんでそばにいてくれるの」

「好きだから」

「なにそれ。変なの」

そういうと私は笑った。誰かは強く抱き締めた。
これ以上、私がボロボロとはがれて落ちていかないように
ぎゅっと誰かは抱き締めた。
私も、ずっとぬけだしたいのだ。ここから。
でも、できない。
私は笑う。静かに。
あとは崩れていくだけだ。

ああ、空がキレイだ。