ためいきとゆめときみ。

消えた雲を探しに行こう

それはもう誰かが食べてしまったのかな

溢れる湖、こぼれた星屑。僕の目はキリンが生んだ涙のしずく。揺れるスカートからの風、妖精の羽根の囁き、そして優しく照らす月光。

君がつくため息をそっと砂時計に変えて

僕と夢の記憶を数えよう。

 

ひとつふたつ、みっつ。

そこからはずれたラムネ玉がころころ転がってバクがぱくぱく食べちゃった。それを探してリスが走りまわってる。

ぶどうジュースの海に浮かんでたアイスクリームの島が泣いたから、どろどろどろーって溶けて七色にヒカる人間の鱗を隠しちゃった。

人間は目玉だらけの真っ黒くろすけで工場の灰みたいな息をして、その海をじゃぶじゃぶ泳いでる。だからたくさんの星屑たちや動物が息ができなくなって、結晶になって世界中にバラバラに飛んで行っちゃうんだ。

ちいさくちいさく人間たちに見えない様に。これ以上穢されない様に。

透明のクリスタルで出来たイルカが金色の涙を流して人間のヘドロを虹色のミックスジュースに変えちゃうの。

人間の手も足も透けていってただの雪だるまみたいな毛糸にまるまるん。するするするーっとほどけていって、オレンジ色のお空に一目惚れ。プレゼントをあげたくて自分を結んで引っぱってさあ、どーぞ。

空いっぱいのおおきなリボンでデコレーション。

夜空のカーテンが降りてきて みんなあくびを始めた、さあそろそろおやすみなさい。

 

今見えるもの

小さい頃は 何にだってなれるし

わたしは皆よりもずっとずっと幸せ者で

愛されていて、よく出来る子なんだってそう疑わなかった

 

わたしはどこの誰よりも特別なんだって。

 

今だからわかる みえてる世界が小さかったからだって。

 

今は世の中のことを考えるとこわいものだらけだ

ちびの頃よりずっとビビリになったし

何にでも保険をかけて考えるようになった

こわくてこわくて仕方が無い毎日だ

不安で夜も眠れない日だってある

 

手に入れればいつか失う

だから最初からいらないなんて考えて

始まりを避けては終わりを遠ざけようとした

終わりなんてなければいい。

そう心から思う

 

わたしはいつだって確かなものばかり追いかけてる

 

あれでもない、これでもないって

確かな愛ばかり追いかけてる

追いかけてる内は得られるはずもないことも知りながら。

 

わたしには足りないものばかりだ

何も出来なくてきっと

独りで生きていくのもできっこないだろう

それだけは確かだ

 

神さまなんてこれっぽっちも信じちゃいないけど

なあ、もしいるなら ありがとうといいながら罵倒して

ぐちゃぐちゃにしてやりたいよ

 

よくもこんな不安定で不完全で

独りで生きられない呪いをかけてくれたなって

そしてこう言うんだ。

 

ありがとう。 独りで生きられないから

こんなにも人を愛せたよってさ

これを言うことがわたしも夢でもあるんだ

 

ねえ、もう1度信じてみてもいいのかな

こんなぼろぼろで危うくて脆くなった命を

もう1度預けて信じてもいいかな 

そう今は思ってるんだ

 

ミライのわたし 

きっと今読んでいるでしょう?

 

イマのわたしはさ、

信じてみることにしよっかなってそう思ってるんだ

ねえ わたし どう思う?

 

 

もう頑張る元気なんて残ってないって

思っちゃってるわたしが

 

頑張りたいなって気持ち、芽を出してるんだ

 

倒れるくらい歯を食いしばってさ

もう1度だけ挑戦してやる

無理だったら

わたしはこれだけやったんだって開き直って

ぜーんぶ君に押し付けてやるんだ

 

独りじゃなんだ

もう 大丈夫

 

さあ、この扉を大きく開けよう

次は笑顔を咲かせるんだ

涙の雨はもう降らない

これからは希望の桜が満開に咲き誇る

春の訪れの音を聴きながら

きれいないろを咲かせる季節(とき)がやってくる

 

さあ、頬を伝う涙を拭って

もう独りじゃない

 

こわいだけの日々はもう幕を閉じる

これからはたのしいことで溢れてるはずだから

 

悲しみに暮れるわたしよ

前を向いて

顔をあげて

そして微笑んで

 

 そっと踏み出すの

 

まだ終わりがこわくて始まりを拒んでしまう

だけどきっと大丈夫

 

そっと 歩き出すの

 

そう、いい子ね

この手をどうか離さないで

 

部屋の隅のホコリが怒ってぼくを殺す。

『そこで何をしているんだい』

 

「なにもしてはいないさ ただ天井を眺めているのさ」

 

『それはどうしてだい 天井が好きなのかい』

 

「天井が友達なのさ 僕の話を聞いてくれる唯一の。」

 

『天井は友達だと思ってるのかなあ』

 

「そんなのわからないさ 天井は喋らないからね」

 

『喋ったとしても本当かどうかわからないとは考えないのかい』

 

「人間とは違うんだ 心がないから」

 

『でも大切にしているだろう その彼を』

 

「そうかな、わからない 僕はただ誰かに話を聞いてもらいたいだけさ」

 

『人間は君に優しくないのかい?』

 

「勿論優しい人はいるさ それと同じくらいこわい人たちもたくさんいるんだよ」

 

『では、その“優しい人間”は何故どうして優しいんだろう』

 

「それはきっと心があって……、思いやりっていうものがあるんだろ」

 

『だけれども、こわい人たちも心は心はあるだろう?人間以外には心がないと言う君なのだから こわい人たちも人間だ、きっと心はあるだろう』

 

「そんなことはわからないよ 心というものはとてもやっかいでめんどくさくて危うくていつだって余裕なんて無いのさ」

 

『そうかな』

 

「そうだよ」

 

『ところでだけど、私は君は優しい人間だってずっと前から知ってるよ』

 

「そうか、それは嬉しいな ありがとう」

 

 

 

 

 

 

『……でもさ 君には心がないね』

 

 

モノクローム


毎日息をして毎日ご飯を食べて
毎日夜になったら寝てそしてまた朝がきて
その“毎日”というものをひとは私は過ごしていく。

毎日を重ねて人は生きていくのに
毎日を重ねる度に色褪せてみえて
すべて霞んでるの

私の目も心も汚くなったのか
君の生きてるっていうここを見失ったのか

 

どっち?

何も感じない

何も感じない

ただそこにあるだけ

何も聞こえない

ただそこに見えるだけ

どこにいったのかな

それがないとわたし困るんだ

気持ちを吐き出せなくなって
傷が滲んで膿んできちゃう

ねえ返してよ
それとも最初からそんなものなかったのかな

ねえ聞こえてる?
かえってきてよ

確かにこの手で掴んでたはずなの

それがないとひとをすきになれないの